リフォーム 奈良のバージョン

エコロジカルといっても、どんどんヴァージン・パルプを使い捨てるよりはマシ、という程度に考えるべきである。 再生紙使用が売りものになっているあいだはダメなのだ。
ましてや、いまのところコスト高の再生紙使用を理由に定価を一割以上も上げ、ほとんど読むところのない雑誌を作るなんてもってのほかだ(ここだけの話だが、これはS編集長になってからの「Aジャーナル」のことである)。 原木の枯渇に対する危倶は、すでに行政サイドにはあり、代替原料の探索も始まっている。
いまのところもっとも有力視されているのがケナフである。 ケナフはアオイ科の一年生草本で、大麻(アサ科、あるいはクワ科)、黄麻(シナノキ科。
綱麻ともいい、繊維はジュート)、マニラ麻(バショウ科)、サィザル麻(リュウゼツラン科)などと並んで広義の麻に含まれる繊維原植物だ。 インドまたはアフリカ原産と言われ、熱帯から亜寒帯まで広く分布し、合成繊維が登場するまではアジア、アフリカ、中米などで栽培されていた。
栽培歴が古く森林資源が乏しいタイや中国ではすでに実用化され、早くから製紙原料としての開発研究が行なわれてきたアメリカでも新聞用紙の生産が始まるらしい。 日本でも環境庁が唱導して育種、栽培、製紙技術の研究に着手して、なぜ熱帯林が重要なのか割箸や紙といった木質原料の製品の「浪費」や「リサイクル」が、愚かにもストレートに熱帯林と関連づけて語られるのは、熱帯林の危機が広く知られ、そのくせ危機の実態がほとんど理解されていないことを物語る。
そこで、まず熱帯林の概況を整理しておこう。 FAOは各国政府機関の報告や現地調査に加えて、人工衛星によるリモートセンシングをも援用しながら世界の森林面積とその消長を把握することに努めているが、いまだに途上国については明確な数字がない。
85年発表の「80年森林資源調査」では、閉鎖林と疎林(樹冠の投影面積が地面の10パーセント以上の森林)を合わせた森林面積が約421億2000万ヘクタールと記載されているが、91年刊行の森林統計を集めた小冊子では80年の時点で約36億ヘクタールだったと修正されている。 92年半ばに公表が予定されている「90年森林資源調査」がある。
紙については、なるべく使わない、という「正論」はせいぜい過剰包装をつつしむぐらいのレベルでしか受容されそうにないから、当面はリサイクル率の向上と代替原料の開発研究という、この二本立てで進むほかあるまい。 ばはっきりするかもしれないが、いまのところ散発的に出される発表で従来の数字を訂正しながら推定するしかない。
で、推定のうえで話を進めると、80年時点の世界の森林面積は陸地面積の約二7パーセント。 これが90年には25パーセントぐらいになっているようだ。

減ったのは主に熱帯林である。 減少面積は一年に本州の4分の3に相当する1700万ヘクタールと言われ、80年に19億ヘクタールと見積もられ、その後、18億ヘクタール強と修正された熱帯林面積が、90年には16億ヘクタールそこそこになっている。
その16億ヘクタールのなかでも、もはや人為がほとんど及んでいないのは何割か、あるいは何分の一かだが、熱帯林は種の宝庫である。 5百万ないし一千万といわれる地球上の生物種の約半分がここに存在するという。
それぞれが地球生態系の生み出した生命であり、例によって身勝ジーンプール手な人間にとっては、農業や医学に大きな恩恵をもたらしうる竺逼伝子給源でもある。 熱帯林の減少と併行して、これが失われるのである。
人類にとって、というレベルで重要なのはもう一つ、森林が炭素の固定装置であることだ。 炭素の循環については、まだよくわかっていない部分があるが、地球上の植物が固定している炭素量は大気中の炭素量約7000億トンに匹敵する6000億〜8000億トンと推定され、熱帯林がその半分を保有している。
熱帯林の減少は、地球の温暖化、生物種の絶滅、洪水や渇水などをもたらす。 しかし、これは人間が文明を創出した必然の結果なのだ。
推計には大きな幅があるが、現在、年間10億〜26億トンが森林の劣化・減少によって放出されており、9億〜25億トンが熱帯林の減少分だと言われる。 化石燃料の消費による年間50億トンとともに、これが地球温暖化に大きな影響を及ぼしているのだ。
熱帯林はまた、木材だけでなく、ラタン(藤)、竹、ゴム、樹脂、精油、タンニン、ステロイド、染料、果実、ナッツ、スパイス、薬用植物などの給源でもある。 森林が劣化・減少すれば、当然これらの林産物供給機能が衰える。

さらに水土保全も森林のもつ重要な機能であるが、とくに熱帯では多雨林の破壊は土壌の浸食と流出を招き、乾期が長い季節林やサバンナ林なら塩類の集積から砂漠化への道を開きやすい。 ダムや河川への土壌の堆積、洪水、渇水が発生し、土地生産力が低下する。
食糧不足が農地転用のための新たな森林破壊の動因となる。 また、都市への人口移動が都市環境を悪化させることもある。
まさに悪循環である。 ざっと並べただけでも、熱帯林が重視される理由はこれだけある。
その保護が地球環境保全のための重大事だということはまちがいない。 そして、だとするとわがニッポン国の立場はかんばしいものではないことになる。
FAOの林産物年鑑には木材・主要木材製品の品目ごとに各国間の貿易量が掲載されているが、これを眺めていると、ほとんど途方に暮れてしまう。 輸出国にとってもっとも付加価値の低い丸太をとれば、日本は一国だけで熱帯産原木丸太の半分近くを輸入している。
フランス、イタリア、ポルトガル、スペイン、旧西ドイツなどのEC諸国も、ガボン、リベリア、コートジボワール、カメルーン、ガーナといった熱帯アフリカから10万立方メートルのオーダーで丸太を輸入しているが、日本が熱帯アジアから輸入する量はそれより2桁多い。 製材・単板(ベニヤシート)・合板では熱帯アジアからの主要輸入国にオランダやイギリス、アメリカが加わるが、やっぱり日本は一桁多い。
熱帯圏ではブラジルが唯一の輸出国である木材パルプになって、やっと日本の数字は突出したものではなくなる。 それでもアメリカについで第2位だ。
これでは各国の環境保護団体からの風当たりが強いのも無理はない。 とりわけ「重罪」とみなされているのが丸太の大量輸入である。

もうよく知られているように、「森食い虫」が食い荒したフィリピンやインドネシアは、国内資源保護と木材工業育成のため丸太の禁輸策をとったので、現在の日本への熱帯産原木供給源はマレーシア(主としてカリマンタン島=ボルネオ北部のサラワク州、サバ州)とパプアニューギニアだ。 他のアジア、アフリカ熱帯圏からも少々あるが、マレーシアだけで総量の9割以上、パプアニューギニアを加えると98パーセントを超える。
では、90年の時点で約1100万立方メートルという輸入熱帯丸太が、日本でどのように消費されているかというと、8割以上が合板、一部が板などに製材される。 合板の用途は、コンパネこと建築用のコンクリート流し込み用型枠、住宅下地材、家具・建具材が大口で、ほかに大型家電製品の輸出用梱包材や展示用材、テレビ番組の簡便なセットなどにも使われている。

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